ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛







「………ふぅ」




マンションのエントランスを出てから、私は大きな溜め息とともに、呆然と空を見上げた。



いつの間にか、外はすっかり夕方になっていた。



夕陽に沈んだ街。


遠くの高層ビル群が鮮やかなオレンジ色に染まっている。



この分じゃ、社に戻った頃にはすっかり夜だな………。



まだまだ仕事は残っているし、退社できるのは夜中になるだろう。



そう思った瞬間、どっと疲れがやってきて、一気に身体が重くなった気がした。




駅に向かって歩きながら、今日一日であったことを思い返してみる。



長い一日だった。


そして、なんだか、ずいぶんと変なことになってしまった。



今朝までには考えもつかなかった展開。



いきなり編集長に呼ばれて、朝比奈光太を担当することになり、


朝比奈光太の才能に度肝を抜かれて、


朝比奈光太のろくでなしぶりにさらに度肝を抜かれて、


最終的には、まさか、朝比奈光太の恋人になることになって。




「………なに、この展開?

ついていけないわ………」




こんな無茶苦茶なストーリー、そこらの三流作家だって書かない。



現実は小説よりも奇なり、ってやつ?




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