ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
駅まで送るという俺の申し出を頑なに拒否した彼女が、部屋を出て行くのを見送ってから、

俺はベランダに出た。



エントランスから出て来た彼女は、どこか怒ったような足どりで、足速に街を通り抜けていく。



パンツスーツの脚がきれいだ。



つやのある黒髪が歩調に合わせて揺れるのが見てとれた。



うーん、なんてきれいなんだ。




それに、俺に怒った顔も、すごく魅惑的だった。


男というものは、美人に叱られるのが好きなものだ。


彼女のような美しい女性に、これから毎日叱咤激励してもらえるのかと思うと、にやにや笑いが止まらない。




俺はベランダの手すりに頬杖をつき、いつまでも彼女の後ろ姿を見守っていた。




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