~color~サイドストーリー



ただただ、泣き喚いた。


ただただ、綺麗な星空の下で、波の音に消されることもなく、あたしの声は響いていた。


後から聞けば、翼のお兄ちゃんが、翼から預かり、ずっと手元に置いていたもので………


もしも俺がいなくなったらと、日付まで指定して送ることを頼んでいたものだった。


そんな、恋愛小説みたいな物語があるのだろうか……


どこまで翼はかっこいい男なのだろうか……



そんなことを思えるのも、今になったからで、



あの時のあたしは、その手紙を握りしめては、翼のぬくもりを感じ涙していた。



皮肉にも、飛翔くんと別れたばかりの時期で……



全て翼に見透かされていたようで


翼に飛翔くんと出逢うように仕組まれたんじゃないかと思うくらい……



翼と初めて出逢った、あの夏の日


そして10年後、飛翔くんと出逢った、あの夏の日は


同じ日にちでもあり、同じ名前……



やっぱり、飛翔くんとは出逢うべくして逢ったのではないかと思ってしまう。



こんな不思議なこと……



そう思いながら、あたしは泣きつかれるまで、翼のいる海で1人涙していた。



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