白と黒の携帯
◆事故◆
「うわっ!!」
-キ―――――っ!!!!-
-ドン……-
「………お、美潮!」
「ん……」
ゆっくり視界に入る光。瞼が重い……。
「良かった!お父さん先生呼んできて!」
お母さんの声。朝?学校行かなきゃ……
「美潮?分かる?お母さんがわかる?」
視線を向けると目に一杯涙を溜めたお母さんの顔。
ゆっくり頷く。
その後ろに見えるのは知らない無機質な空間。遠くから聞こえるカチャカチャ金属が擦れる音。
「ここ………どこ?」
自分の部屋じゃない。なんでこんなとこにいるの?
「病院よ。昨日の夜事故にあってずっと眠ってたのよ。」
ハッとした。
そうだ。私徹と海に行くつもりで……そしたら前からトラックが突っ込んできて……
最後に聞いた徹の叫び声とバイクのブレーキ音、そして体に走る鈍い衝撃。
それが最後の感覚。
その後は何も分からなくなった―――――。
「そうだ。徹は?無事なんでしょ?別な病室?」
「……………」
「ねぇ」
お母さんの顔が辛そうに歪む。不安が胸をよぎる。
「徹くんね……亡くなったの。助かったのはあなただけ」
「う……そ」
徹が?あの徹が死んだ……?嘘だよ。だってさっきまで一緒に居て笑ってた。
「嘘!」
-ガッターン!-
「美潮!落ち着いて」
ベッドから起き出そうとしたけど身体が付いてこない。そのまま点滴と一緒に倒れ込んだ。溢れる涙で視界がかすんでいく。
「いや……徹」
「美潮落ち着いて。ほらベッドに…」
「徹…徹!いやぁっ!」
止めに入るお母さんを振りほどいて徹の元に行こうと必死だった。どこかに居る気がして早くその胸に飛び込みたくて……。