白と黒の携帯
たいして着込んでいないから下着だけになるのなんてあっという間。
刺さる徹の視線が痛い。体への暴力以上に耐えがたい痛み。





「これも……外すの?」





視線を逸らしながら下着を指差す。








「もういい。もう…………」






声が震えてる。
私の体に花咲く色とりどりの無数の痣や傷。ビビったよね……好きだった女がこんなんじゃ。

近付いて来る気配。私の目の前にくるとスッと腰を下ろした。





「……しょ…う」





そっと私の腕に触れる。そのままゆっくり足へ……上へ上がってウエストからラインをなぞって首へ……そしてそのしなやかな指は私の両頬を包み込む。






ドキッ





目が合った。辛そうに苦しそうに寄せられた眉。曇りのないその瞳には涙がたまっていた。




-何であんたが泣くの?-





きつく結ばれた口から時折絞り出す声。





「…くしょう………ちくしょう……ちくしょう。なんでこんなにしやがった……こんな……綺麗な肌なのに」






何度も何度も繰り返す。
たまった涙が流れてもそれを拭おうとせず、ただ私の傷を癒すかのように全身を労るように優しく優しく触れてくれる。



私のために悔しがってくれるの?怒ってくれるの?泣いてくれるの?





私なんかの為に…………………






胸の奥底、真っ暗な闇の中にポッと小さな明かりが灯った気がした。ずっと寒かった心が少しだけ暖かいな。










「徹……ありがとう」




自分でもびっくりするくらい優しい声が出た。私にもこんな声まだ出せるんだね…


私の声に顔を上げた徹の涙を手のひらで拭い、そのまま腕を徹の首に回した。ゆっくり顔を近付け唇を重ねた。





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