白と黒の携帯
私の思いがけない行動に最初はビックリした顔してたけど、徹はしゃがんだまま両腕を下ろし黙って私を受け入れた。
その晩は久しぶりにゆっくり眠れた。
この場にヤツはいない。携帯も電源を切ってる。
誰にも邪魔されない安心できる空間。
そして……
徹の腕の中だから。
一晩中一緒に居てくれた。
不思議とそんな状況でも徹は何もしてこない。
必要以上に体に触れてこない。ただ私に腕と胸を貸してくれただけ。
それでも『一つだけ』と髪だけは撫でてくれた。私が眠りにつくまでずっと優しく撫で続けてくれた。
頭を撫でてくれる手のひらと髪を梳く指先からあったかい徹の気持ちを感じて私の心の傷が少しだけ癒されていくのを感じた…………
「おはよ」
目を覚ますと目の前にはニコッと白い歯を見せて笑う徹の顔。
ずっと見られてた!?こんな汚い顔!
急に恥ずかしくなって、タオルケットで顔を隠す。
「美潮、腹減らない?」
目だけ壁に掛けてある時計を見ると、お昼の1時。
「私随分眠ってたんだ……徹、学校は?」
「さぼった。美潮こそいーの?」
「私暫く行ってないから」
「ふ~ん。取りあえず飯食わない?」
ベッドから起き上がった徹は私におかまいなく、クローゼットを開けてさっさと着替え出す。
白いTシャツにダメージが入ったジーンズ、黒いリストバンド。
「ちょっと待ってて」
部屋から出ていく。
そういえば気付けば私下着のまま。
ワンピはボロボロだし………
何もかもに無気力でベッドに起き上がるけど溜め息しか出ない。
顔にかかる髪がウザくてかき上げる。
-切りたい-
彼の好みで伸ばさせられてたこのロングも今ではウザいだけ。
-ガチャ-
「ちょっとノックくらいしてよ!」
「俺の部屋だもん」