白と黒の携帯


しれっとして答えた徹は手に持っていた服を投げてよこす。






「それ着て。嫁に行った姉貴のだけど、サイズ同じ位だと思うんだ」






白いタンクトップに膝上のGスカ。






「後ろ向いて」

「なんで?」

「着替えるから。見たいなら別にいいけど」
「いや…はい」






素直に背中を向ける徹をひと睨みして、服を身に着ける。

悔しいけど、サイズはピッタリ。





「ふ~ん。サイズ当てるなんてさすが変態ね」

「ひでぇ言い方。今うち姉貴んちの物置みたいになってんだ。いらない服とか結構あるから多分未使用の下着とかもある筈だから」





徹に促されてキッチンへ。そこで軽い昼食を済ませる。
ビックリしたこと。
有り合わせの材料で料理ができること。
徹いわく『自活するにはこの位当たり前』だそうで。学費は出して貰ってるけど生活費を稼ぐ為にバイトしてるんだって。
仕送りはもっぱら貯金とバイク。結構しっかりしてるみたい。






「じゃ俺、ちょっと出かけて来るわ」




急に真面目な顔になって立ち上がった徹に一抹の不安を覚える。私…この雰囲気知ってる。





「徹?まさかあんたホントにアイツとこ行く気じゃ……止めて!勝てる相手じゃないよ」

「平気。絶対に美潮取り返すから心配しないで」


「心配するよ。あんなのに勝てる訳ないのに……馬鹿じゃないの?私なんかの為に」





自分が何でこんなに必死になってるんだかわかんないけど……それでも徹が傷つくの分かってるのに行かせる事なんかできないよ!





フワッ





頭に置かれる徹の手の平。降って来る徹の笑顔。





「心配してくれるだけで俺は嬉しいよ。でもさ、一番は美潮の笑顔が見たいんだ。絶対帰って来るから大丈夫」




撫で撫でしてくれて、もう何も言えない私を残し、徹は出掛けて行った――――――






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