白と黒の携帯
「はい」





頭の上から聞こえる嬉しそうな声。まったく…子供みたい。






「ほら分かったから。まず外れた腕治すわよ」

「え………?」





傷の手当てしないといけないし、外れた腕もいつまでもこのままにしておけない。

徹の腕から抜け出して背後に回り込む。ダランとした左手…



「悪いけどちょっと我慢して。いくよ……」
「え?おい…」








ゴキン








「って~っ!」

「入ったよ」

「う~……あ、ホントだ」






左腕を動かしてみる。動く。
良かった。ちゃんと入るか心配だったけど大丈夫みたいね。





「美潮すげぇなぁ」

「私もよく外れるから。でも人のは治した事ないけど」

「うっそ。マジやべぇからそれ」

「うっさい!早く濡れた服脱いでよ。傷手当てするから」

「この前と立場逆だな♪」





ボロボロのくせに白い歯を見せて笑う徹を見てやっと安心した―――――
















-P~P~PP~♪……-








-きた……-







ポケットの中で鳴り響く携帯。手を入れて確かめる。やっぱり………二台ある。





どっちに出よう。本当なら迷わず私の携帯に出るところなのに………この黒い不気味な携帯がとても気になる。私を惑わすってなに?私、何か惑わされる事あるの?


相変わらず微塵の狂いもなく同時に鳴り響く白と黒の携帯………。






-ピッ-





「……もしもし」

「出てくれたね美潮」




私が出た電話。自分の白い携帯。やっぱり黒い携帯に出るのは少し怖かったから。




「徹……」

「決心してくれた?」
「うん……徹が安心できるようにね」

「そう……よかったよ」




相変わらず抑揚のない淡々とした喋り。いつもの徹じゃない。向こうの世界に居るとそういうもの?なんか………寂しい。

< 18 / 37 >

この作品をシェア

pagetop