白と黒の携帯
◆◆◆
「起立、礼」
「はい、HR終わり~。気をつけて帰れよ」
「どこ寄って行こうか~」
「カラオケは?」
「お腹空いたからなんか食べようよ」
そんな声が教室のあちこちから聞こえて来るけど、私はひたすら冷めていた。
友達なんかいないし、作ろうとも思わない。うっとおしい付き合いなんかいらない。
今日だって一週間振りの学校。最後までいたのなんか実に一か月振り。
アイツと別れて晴れて徹の彼女になってから学校に行け、ちゃんと進級しろってうるさく言われる。
今日だってそろそろ単位がヤバいからと徹に無理やり来させられた。
「神木さんが最後までいるの珍しくない?」
「なんかさぁ、あの子根暗だよね。無気力っていうか」
「やめなよ。あの子のバックに怖い人ついてるんだから。復讐されるって」
「体中にタトゥ入ってるらしいよ」
こそこそ人の話するならもっと聞こえない声ですればいいのに……。
反論するのもバカバカしい。ほとんど合ってるし…でも、タトゥじゃなくて痣だし、アイツとはもう別れておバカな徹と付き合ってますが?
そんな噂話をしてるグループの脇を抜けて、さっさと教室を後にする。
これで本日の義務は果たしたからね(嫌々ながら)。文句は言わせない。
靴を履いて昇降口を出ようとした私の前をガツンと横切った足。それは下駄箱に乗せられていて、要するに進路を塞がれた事になる。
顔を上げると、馬鹿みたいに派手な髪の色をした男子三人。
あ~こいつら見た事ある。確か三年。前にチームの乱闘で元カレにかなり痛め付けられた筈だけど……
「なんか用?」
「まぁ用っちゃ用かな~」
ニヤニヤしちゃって気持ち悪い。まぁ何となく絡まれる理由はわかるけど。
「S、潰れちゃったねぇ」
やっぱり………
「これでアイツもお前も後ろ盾無いわけだ」
「悪いけど…」