白と黒の携帯
「私アイツとは縁切ったから関係ない」
それだけ言うと、下駄箱に乗せられた足を払いのけ外に出る。もうくだらない争いに巻き込まれるのはごめん。
「待てよ」
でもすぐに手を掴まれる。ギリギリと背中にねじり上げられて身動き取れない。
周りを通る下校の生徒も巻き込まれたくないから見て見ぬ振り。
「縁切ろうが関係ないの。お前らにはさぁ、個々にお礼がしたいのよ。散々世話になったからさぁ」
「あたし…世話した覚えない…けど?」
そのまま引きづられて歩き出す。多分人気の無いとこに連れて行かれる……。
男の力に敵わないのは身をもって知ってる。悔しいけど、ボコられるか回されるかどっちかだろう。
-自業自得…か-
逆らえなかったからって悪い事が許される言い訳にはならない。
ある程度覚悟を決めた時だった。
バキッ!
「ぐはっ……」
後方で異音が。でもおかしいと思っても身動き取れなくて振り向けない。
「だれだ?お前……」
腕をつかんでる奴の威嚇するかのような低い声。 顔にかかった髪で様子が伺えない、ウザいこれ……切りたい。
その時聞こえて来た声にビックリした。
ここにいる筈の無いアイツの……
「お前こそ、美潮どこに連れてく気?」
聞き覚えのあるハスキーボイス。ただし……いつもより低い、腹の底から響くような。
「徹?なんでここに?あんたも学校行ってたんじゃ……痛っ!」
私よりも数十センチ高い男にギリギリ締め上げられる腕の痛みに思わず声が出る。肩が外れそう……
「……話もういいや」
短い徹の声の直後、『ドカッ……ドサッ』何か打撃音が響く。
「あとお前だけ。すぐに美潮開放すれば逃がしてやる」
「はぁ?よそ者に命令される筋合い無いなぁ……ほれ」
「ん…っ!」