白と黒の携帯
肩と肘が悲鳴を上げる。
爪先立ちももう限界……
その瞬間、耳元でヒュッと風が鳴った。体の後ろから伝わって来る衝撃…腕は軽くなったけど、掴まれたまま背中に有り得ないくらいの重さが掛かって体勢が崩れた。
-潰れる!-
地面が目の前に近付いて、そう思った時だった。
間一髪、そこから引っ張り出された。
「大丈夫?」
いつものハスキーボイスに我に返った私は、自分が地面に転がった徹の胸の中に居ることに気付いた。
「…あぁ」
うっとおしい髪をかき上げて辺りを伺うと、三人まとめてのびている。
「…あんたがやったの?」
「あぁ」
「なんでこんなとこにいるのよ」
「迎えきた。校門で待ってたらお前連れて行かれたような話聞こえて来たからさ。何があった?」
「あたし恨まれてるから。アイツと切れたところでそれは変わらない」
徹の胸から離れて制服の砂を払う。
「こんなことしたら徹も狙われるよ」
「…………」
落ちた鞄を拾って歩き出した私の後ろをゆっくりついて来る。
周りでヒソヒソ話する生徒達。ある声が聞こえて来た。
「あれってR高の前山徹じゃん?」
「ほんとだ。なんで神木美潮と歩いてんの?」
ふ~ん、有名なんじゃない。
離れて歩いた方がいいって分かってるみたいだし。私はそれはそれでいいし……。
「美~潮♪」
「えっ…ヤダちょっと!」
急に肩を抱いて来た徹の突然の行動にビックリして、普段出さないような大声を出してしまった。
「何してんのよ!」
「だから迎えに来たって言ってんだろ?美潮俺の彼女だもん」
ニッと笑う徹の向こう。明らかにざわついてるから。
「私に関わると悪い噂立つよ」
「………いいよ。外野の言葉なんか関係ない」
肩を抱く腕に力が籠る。大丈夫だよって言ってくれてるみたい。