白と黒の携帯
「待てよ、神木」




背後から呼ばれる声に振り返るとさっきのアイツら。徹にやられてボロボロのくせに…。



「タダで済むと思ってねぇよなぁ。学校いれねぇようにしてやる」
「お前友達いないだろ。皆俺らの指示だよ」


そうだったんだ。どーりで学年中から避けられてる訳だよ……関係ないけど。
だけどもうくだらな過ぎて溜め息しか出ない。腹とか首とか押さえながらニヤニヤしたって迫力のかけらも無いよ。



「…別に。痛くも痒くも無いよ。こんなとこ辞めたって平気……」



私の前に伸ばされた手に制される。
割って入ったのは徹だった。
その広い背中に庇われる。



「なんだよお前さっきから。俺らそいつに話あんだよ。ちょっと喧嘩強いからって調子乗ってっと潰すよ?お前R高だったら知ってんだろ?先輩にあのS潰した英雄いるの。その学章二年だよなぁ。その三年頼んで……」


「勝手にすれば?」



淡々とした喋り。ここからじゃ徹の表情は分からない。



「俺の事は好きにしたらいい。でもこれ以上美潮に何かしたら俺はお前らを許さない」



脇から見えるアイツら、徹の言葉に明らかに嫌な顔をしてる。



「馬鹿だよ。アイツらほんとにやるよ?私なんか庇ったって損するだけなのに…」

「美潮は黙ってろ!」




ビクッ




怒鳴られた。
初めて徹にきつく言われた。別にショックとかそんなんじゃないけど……なんでそんなにムキになるの?





「お前まじウザい。こんな黒い女の為にムキになってばっかじゃね?潰すわ」


携帯を取り出すとどこかにかけ始める。すぐに電話を切ると気味悪く笑う。


「すぐ来るってよ。お前もう終わり」



「徹……」


シャツの袖を引っ張ってみるけど、びくともしない。

周りの野次馬も乱闘の予感に、巻き込まれたくないから距離を取ってる。
そう、ここには自分を犠牲にしても誰かを助けるような人はいない。
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