白と黒の携帯
「徹……もういいから」
「美潮、あのさぁ」
ゆっくり振り向く。
ちょっとなんで徹が溜め息つくのよ。
なんかすごい呆れ顔だし。
「なんでそんなに自暴自棄になるの?毎日通う学校は楽しい方がいいでしょ?」
「は?こんなとこ馴れ合いに来る訳じゃないんだからどうでもいいし……」
「ほらそれ。そんなんじゃだめだよ。ちゃんと友達も作って、思い出も作って高校位出ようよ」
ちょっとだけ染めた髪も、日に好けると色味を増す。綺麗なブラウン…ニッと白い歯を見せて笑った徹が印象的だった。
ふと、何かに気付いて空を見上げた。
「来たな……」
……ドルン、ドルン、ドドドド……
辺りに響き渡る爆音。バイクだ。音からすると……二台?
校門が見えるこの位置。もちろん向こうもこっちが見える訳で……
平然と校内に侵入して来て。
目の前のコイツらが余裕なのがムカつく。
手を上げて合図したら、その脇に止まる黒い二台のバイク。
その持ち主がゆっくりとメットを外す。
一人はかなり小柄。赤い短い髪にサングラス、もう一人は逆に大柄でロン毛のオールバック。耳には無数のピアスが光る。
「お~勝クン、心クン久しぶり!わざわざ呼び出してごめんね。実はさぁ、うちのガッコ来て調子こいてるお宅のガッコのガキ見つけてさぁ。まる~く収めようとした俺らもこっぴどくやられたのよ~」
見るからに悪そうな奴等。あの目付き…相当修羅場くぐってる。こんな奴等相手にしてたら命無い。ヤバいよ……
「徹……」
見上げると涼しい顔してる。アンタが喧嘩強いのは分かったけど、余裕かましてて大丈夫なの?
赤い坊主頭が口を開く。
「あれ?あの茶髪?ほんとだ。うちの制服。ところで、なんで女連れてんの?」
本題を聞かれて待ってましたとばかりに捲し立てる。
「そう、あの女!なんとSの頭のスケなんだ」