白と黒の携帯

『……離れたくない……一緒に……』

「………っ!」



思わず『私も一緒に居たい!』って言いそうになって、慌てて口を塞いだ。

白い携帯の徹との約束。返事をしちゃいけないって。

惑わすってこれ?答えたらどうなるの?
私…向こうの世界に誘われてるの?







離れたくない?別れたくない、一緒に……ってことは、私も連れて逝きたいの?そうなの徹……?





私は必死に口を噤んだ。何度と無く返事をしそうになった。




でも……





白い携帯の徹より感情的で、いつもの徹を感じることができた。




『……寂しい……痛いよ………辛い…』




泣き言なんか一度も言わなかった明るい徹がだよ?
痛々しいくらい、辛そうに苦しそうに絞り出される電話口から聞こえるその声に……




「ふ………っ」




涙が止まらなかった。声を出して泣きたかった。
辛いの?苦しいの?ごめんね徹、私だけ生き残ってしまって……





ピッ





初めて自分からTELを切った。
その声を聞いてるのが辛かった。心がちぎれそう……





「徹ぅ………会いたいよ」




思い出の場所でアンタを思い出す度、その笑顔が浮かぶ度に会いたくてたまらなくなる。
でも忘れるって約束だからね……




校門に寄り掛かり、空を見上げて……涙を流した――――――














< 29 / 37 >

この作品をシェア

pagetop