白と黒の携帯
周りはみんな表面だけの付き合いで、他人がどうなっても関係ない、自分さえ安全ならそれでいいって思ってるって思ってた。
でも………
この子達は助けたいと思ってくれてたの?
私みたいなのを……
「かっこよかったんだよ~!不謹慎だけど、カンフー映画見てるみたいに綺麗な動きであっという間に三人倒しちゃってさぁ、羨ましいよ。彼氏、ナイトみたいだね♪」
ここまで褒められると……悔しいけど、私も嬉しい。
「あ、神木さん笑った!」
「え……」
つい口元がほころんでたみたい。何年ぶりだろう。ずっと笑顔なんか忘れてたのに……
「綺麗な顔なのに、いつもクールな感じだったから……笑うと可愛いんだね」
「髪、ロングもいいけど、少し切ってみたら?」
「そうだね。肩くらいは?」
髪は切りたかった。
元カレと付き合う前はずっとボブだった。徹が知ってる昔の私も………。
「……切ってみようかな」
「うん。楽しみだね♪」
女の子達が笑う。自然な笑顔。徹がプレゼントしてくれたこの自由な空間の中で、新しく自分をスタートさせてみるのも悪くないっか。
その一種の区切りとして……私は放課後、髪を切りに行ったんだ。
-ドキドキする…-
久しぶりにこんなに緊張する。
徹の学校の校門。
髪を切ったのを、いの一番に見せたかったから勇気を出してここまで来た。
知らない学校、知らない人々……早まったかなってちょっと思った。
アポなしの待ち伏せ。
この頭を見た徹はなんて言うか。
身も心も綺麗な頃の私を思い出してくれるのか、それとも似合わないって笑われるのか。
どのくらい待ったか。日も傾き、校門から出てくる生徒も疎らになった。
-もう帰ったのかな……-
もしかしたら髪を切りに行ってるうちに帰ったのかもしれない。