白と黒の携帯



案内したかった先はどうやらここらしい。
ギッギッ……と音を立てながら、数歩階段を上って大きな戸を開ける……のかと思ったら、壁づたいに移動して、一番奥の窓の前へ。2メートル程の高さがある高窓。
徹が手を掛けると難なく窓が開いた。


「ここだけ、鍵壊れてんだ」



そう言ってニッと笑うと、窓枠に手を掛けて足場ないのに、懸垂の要領で軽く窓から中に侵入。無駄のない、やたらと手慣れてるとこを見ると、さてはここの常連だな……


んで!私はどうすればいいのよ!徹は背が高いからいいけど、私なんか手を伸ばしたって窓にも届かない。




-ギーッ……-




物々しい音がした方を見ると、正面の大きな戸が軋む音を立てながらゆっくりと開いた。
そこからひょっこり顔を出した徹。


「おいで」



導かれるままに建物内に入ると、思ってたより結構広いスペースの先には、小規模のステージとグランドピアノがぽつんと置いてある。凄いレトロな空間………



「うわ……なんか雰囲気あるね」

「この講堂は今はほとんど使われてなくてさ、文化祭の時に軽音部がライブしたりとかする位かな」

「へぇ………」




ちょっぴり独特な木の匂い。使われてないって言っても、綺麗に磨いてある床。




「でさ、ここまで来て貰ったのには理由があって……」




手の平を差し出される。どうやらエスコートしてくれるらしい。
私は珍しく素直に従う。

ギシギシと床の鳴る音を聞きながら、ゆっくりステージに近付く。
そして脇の階段から上に上がる。



「うちの学校には恋が叶うジンクスってのが幾つかあるんだけど」

「徹、アンタ男のくせにそんなの信じてるんだ………」

「いや。今まではそんなの全然興味なかったよ。でもさ、せっかく好きな相手が目の前にいるんだし」

「つうか、もう叶ったじゃん」

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