白と黒の携帯
「……はい」
「何よ」
「キスってさ、するのもいいけど、されるのもいいよね。気持ちいいし…」
そう言って、目をつぶる。全く無防備になった徹。
ここまで来て恐れるな!こいつとキスするの、初めてじゃないじゃない。
覚悟を決めた。そっと顔を近づけて…………唇を重ねた。
柔らかくてちょっと熱い、徹の感触が心地いい。
あの時のように、私にされるがままの徹。
唇を放すと、ニヤッと悪戯っ子の笑顔を見せる。
「美潮ちゃん大胆♪こんな恰好で何する気?続きしちゃう?♪」
私はまだ徹に馬乗りになったまま。慌てて退ける。
「な~んだ。避けちゃうの?俺としてはその先も期待しちゃってたんだけどな」
「……っ、馬鹿!」
調子にのんな。人が真面目な時に……
徹に背を向ける。
すると、背後から腕が伸びて来て、ふわっと覆いかぶさる。背中に伝わる徹のぬくもりと、鼻をかすめる爽やかな香水の香り……。
「……何よ」
「ありがと」
回された腕はそのまま、こつんと背中にあてられた徹のおでこ………
「正直心配だったんだ。迷惑なのかなって……ほら俺って周り関係なく強引なとこあるし。だからキスも俺からはしない。美潮が好きになってくれるまで。だから……もっと俺のこと見てよ」
顔は見えないけど、いつもより掠れた切ない声………。
そんな声聞かされたら胸が苦しいよ。
会えないでいる五年間、徹はどんな気持ちで思い続けていてくれたんだろう。
「………」
「さて。湿っぽい話は置いといて、美潮こっちおいで」
何の返答もしないのを気遣ってか、徹はいつもの明るい声、と笑顔で私を呼ぶ。