白と黒の携帯
-わかんない……-







だって誰かを好きになったのなんてずっと前の話で忘れちゃった。
ずっと怯えて暮らしてた。感情なんか……ずっと前に捨てちゃった。






「そっか……」





ジャケットはそのままに徹は私から体を放して空を見上げる。満点の星空。








「でも俺と付き合って。約束」

「………超勝手」






強引で自分勝手でぐいぐい引っ張っていかれる……コイツ昔と全然変わってない。







「美潮、これからどうすんの?」

「行くとこなんかないよ。うちに帰ればアイツに捕まる」






そう。私には何もない。帰る場所なんかない。







「俺んち来いよ」

「は?」

「付き合うなら当たり前だろ。傷、手当てしなきゃ」

「まだわかんないじゃん。それに……迷惑かかる」





こんなお化けみたいな娘連れて行ったら……



「うち誰も居ねぇよ?俺一人で住んでる。親父達まだあっちにいるから。心配いらない」









そっと手を繋がれる。
こんなに優しく手を握られたのなんて何年ぶりだろう。


冷たくなったその大きな手をギュッと握る。

それが合図になってゆっくり歩き出す。半歩前を私の歩幅に会わせながらゆっくりとゆっくりと―――――





















-P~P~PP~……♪-





ビクッ!



静か悩みの世界に不似合いなオルゴール音。

私の携帯。

でもおかしい。ドリカムのこの曲は好きな人からかかって来た時にだけ鳴るように設定してる筈。私が好きな人、もちろん徹だけ。

なんで?



慌てて携帯を取り出そうとした手が止まる。ポケットの中、携帯が…………二台!?

そんな筈ない。手に触れる携帯を恐る恐る出してみる。




「きゃあっ!」



思わず砂の上に落としてしまった携帯。確かに二台。
一台は私の白い携帯。
そしてもう一台は……
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