白と黒の携帯

私と同機種の黒い携帯。このスカルのシール間違いない。でも………









血だらけだった。









なんで?なんで徹の携帯が私のポケットに?



混乱する私をよそに携帯の着信音は続く。不思議な事に二台は全く同じ、一秒の狂いもなく鳴り続けている。





-どっちをとったらいいんだろう……-






両方同じ着信音。当たり前だ。お揃いの携帯に買い換えた時、徹が『二人を繋ぐ曲だから』とダウンロードして設定した。お互いの電話の時だけ鳴るもの……。






この時私が受けたのは白い自分の携帯。徹の物でも血染めの携帯はちょっと怖かったから。





-ピッ-







「……もしもし」

『美潮…か?』






ちょっと印象的な低めのハスキーボイス、間違いない。徹の声!






「徹?よかった生きてたんだ!よかっ…た」





涙が込み上げて来てうまく喋れない私の耳に届く徹の声。





『違うんだ……』





イントネーションの少ない淡々としたしゃべり。普段喋る時は人一倍感情的なくせに……。




「何…が違う…の?」

そこに飛び込んで来る信じたくない言葉。





『俺は……もういない』



「うそ……だって」






じゃあどこからかけてるの?ふざけてからかってるだけなんでしょ?

徹は続ける。





『美潮……よく聞いて。この電話を含めるとあと六回しか話せない。その間に考えて欲しいことがある。俺からのお願い』

「なに?徹のお願いならなんだって聞くよ!」




今まで徹は私のお願いならなんだって叶えてくれた。あの時だってバイトで疲れてるのに寝ないで朝日見に行きたいって私の我が儘叶える為に……。
だから今度は私が叶える番だよね。





『俺の事を忘れる事』
「……え?」





今なんて……?



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