鬼姫マラントデイズ
「……あ……わた、しは…なにを……」



「…安心して、もうあなた方金狐を滅ぼそうとした野狐は罰されていますから」



「…ごめ、んなさい…私、あの時の恐怖と…

野狐に対する恨みで、気が動転しちゃって…


まさか自分が…物の怪になるなんて……」





ちょっとやつれてるけど…艶のある肌に綺麗な金の耳、尻尾。


そしておっとりとした話し方…




「あの…あなた、娘さん…いましたか?」




気付けばそう聞いていた。


だって、この人はあまりにも似すぎていたから。



金鞠に…




「ええ…娘が1人。

けれどあの子と2人で逃げてる途中、別れてしまって…もう、分からずじまいよ。


きっと、あの子はもう……」




金狐にしては、特長が全て一致していた。

親子って、しかも女同士って、こんなもんなのかな。



私には…お祖母様も、お母様も小さい頃にいなくなってしまったから…分からない。




「…その子の名前、聞いてもいいですか?」


「ええ…

金鞠、そういうのよ」



はにかんだように笑った彼女は、けれどすぐに

目をふせ、どこか焦点が合わないところへ目線を投げかけていた。



「……あの、私その子を…!」


意を決して言おうとすると、彼女は驚いた顔を浮かべた。

けどその顔は、私じゃなくて…私の後ろへ向かれてて。







< 112 / 304 >

この作品をシェア

pagetop