鬼姫マラントデイズ
「私は妖狐の一族の元へと戻り、1人でしばらく静かに暮らせるところを紹介してもらいます。

早く、我が子と暮らすためにも…

私は…1人でいなければならないのです」



「お母さん…な、んで…いや、やだ、あたしやだよ……

お母さんと一緒に暮らす!お母さんも、霧花も、みんなで一緒に!」



「…ごめんね、金鞠」




母娘はそのあとも泣きあった。

私はただ、それを見つめることしかできなかった。



……私は今日、なにができたのかな?

…なにもできやしない。



なにも……



「霧花さん」


「っ、はい…」



「……金鞠をお願いできますか…?

私の心が、二度と物の怪化することのないように強くなるまで」



……私には、これぐらいしか…できない。



「……っ、喜んで!」




…しばらくして、迎えの妖狐が来た。

金狐はいろいろな珍しい術が使えるらしい、

あっという間に妖狐の一族に連絡したのだ。




妖狐が移動するために使う術をかける直前も、金鞠はただただ泣いていた。


唇を強く噛み締めて…



『お母さんを、困らせたくない』



そんな強さから…出ているのかな。





「さようなら、金鞠…強くなるのよ」


「…ゔんっ!」


「霧花さん…よろしくお願いします、金鞠を」


「はい!」



美しい金色の目から出た視線が、律希へと向かった。







< 115 / 304 >

この作品をシェア

pagetop