鬼姫マラントデイズ
「だから俺が傷を負って心配するのはそれぐらい…

そう考えてみろよ、別になんともないだろ?」



悲しく笑う彼の声は、小さかった。


赤のメッシュだけが大きく見えて…そんな肩書きを背負っている彼自身は、小さかった。


いつもはもっと存在感大きいけど…



今は。


小さい子供のようで…




ひしひしと伝わる彼の悲しさが、私の心に響く。





「…なら!私が…3人目になる!」

「…は?」



いきなり叫んだ私の言葉に、片眉を上げて怪訝そうに聞き返してきた。



「だーかーら!私が3人目になるって言ってるの!

…無駄に顔は良いけど性格は悪いし、いつも上から目線だし、自己中だけど…


怪我したら悲しいし。


だから、3人目だよ、私が」




そう言って私は笑った。



…ちょっとでも届いてくれたら、いいのだけど。



本当の本当に、律希が怪我したら悲しくなるし。





「…律希はさ、自分が思っている以上に人から愛されてると思うよ?


自分をそんな卑下しないでさ…笑おう?」




人差し指を口の端につけ、無理矢理口角を上げる。



……私の顔が面白かったのかなんなのか、知らないけど!





「…ぷはっ…」




彼は優しい笑顔を浮かべながら、吹き出したのだった。




< 128 / 304 >

この作品をシェア

pagetop