鬼姫マラントデイズ
「おい!お前…猫又か⁉︎」



振り返らずも分かる、

律希だ。



「………ここで終わりか…もっと話したかったわ。

また機会があったらな…


人間よ」




そう言って彼女は美しく、可憐に笑った。


そして、窓の外へと飛んで…消えてしまった。





「…行っちゃった……」


名前も聞けなかった。

…ま、旅好きの猫又らしいかもな。



「おい!大丈夫かよ⁉︎」


「わっ!」



肩を後ろからぐいっ!と引っ張られ、バランスを崩しかける。

そのまま、後ろにいた律希にもたれかかる形になってしまった。



「ごめん!」



すぐ離れたけど…怒ってるかな。


ちらっと律希の表情を伺うと…




「………………ほ、本当に…なんかわかんないけど…ごめん!」



般若のような恐ろしい顔つきになっていました。



な、なんで⁉︎なんでこんなに怒ってんの⁉︎



どうしようわかんない!




「…お前…!」


「はいすいませんでした二度としません!理由知らないけどおおぉぉ!」



「…分かってるならいいか。

1人で妖に立ち向かうなよ、馬鹿」




………へ?




「強い妖力の気配が2つも学園内の同じ位置に感じ取れた。

お前、疲れてんのにまた物の怪の相手をしたのかと…」



「ち、違う!確かに私から突っ込んでったけど、

彼女は気の優しい猫又で…!」





律希は、はぁ、とため息を吐くと、続いて「分かってる、」と言った。




「……心配しただけだ、少し」



……ん?


心配…?律希が…?私を……?




「う、そ……」



「なんだよ、悪いかよ」




いや、全然悪くない。


むしろ…



「ちょっと嬉しいかも……」






< 142 / 304 >

この作品をシェア

pagetop