鬼姫マラントデイズ
「大丈夫だよ、霧花。安心して」



先輩は右手を特に傷の酷い左足へと向けると、何かを呟いた。


すると手からぱぁ…っと青い光が現れ、足を包んで行く。




「ちょっと体力は使うけど、青の術で自分を治癒することぐらいはできるよ。

だから、律希と一緒に敵と戦ってくれ。



…敵は、相当な手練れだ。

けれど、物の怪ではないと思う…そういった禍々しい妖力を感じないんだ」




彼の目が、ふと鋭くなる。


今はどこかへ隠れているのであろう、敵へ向けられていた。






「なにが目的か分からないけど…ただ単に僕を痛めつけようとしていたんだ。

けど動きが速すぎるし、影しか見えないから…全然妖の種類が分からない




確かに…黒い影しか見えない。



相手によって術を変えるという手段も無理になって、戦いは不利だ。




「今まで見てきた物の怪は確かに僕を倒そうとしてたけど、

今回の相手は確かに…なんていうのかな。



全て計算した上で、計画通りに僕を痛めつけている…そんな感じがしたんだよ。




こんな可笑しい事件は初めてだ」





私は先輩の言葉に強く頷くと、1人立っている律希の元へと駆け寄った。







「まだ敵は動いてねえけど、すぐ動くはずだ」




「了解」







私のその言葉が合図かのように、右手の木がざわっ!と激しく揺れ、

認識できない速さで黒い影が反対側の木へと飛び込んだ。






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