鬼姫マラントデイズ
そう言った彼の表情が、少しだけ見えた。




優しくて優しくて。


見たことのないような表情だった。




そして、



私の胸の鼓動を高鳴らせるのはいとも簡単だったんだ。






ドクドクと高鳴る鼓動。


感じたことのない、確かな気持ち。


私はそっと律希を見上げた。








「………やばい」




「…え?」




「ちょ、お前ダメ。こっち見ないで」




ぐいぐいと私の顔を今度は押して来る。



え、ちょ、なによ!


気になってきた!




「どうし……」



たの、と続けようとしたところで言葉が切れた。




私もきっと、





彼の耳のように、



隠している顔のように、



きっと…真っ赤だ。





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