鬼姫マラントデイズ
『まだこいつは子供だ。



それに、人の血を持つ混血者。





いずれ運命が狂う時が来るのだ、今殺めるのはあまりにも酷である。







鬼の村に、この子だけ………戻せ』








『あの人』の声が聞こえた。



久しぶりに聞こえた、あの声。




私を救ってくれたあの声は


私の理解者を殺めた存在だった。









彼の名を、ふと思い出した。


まるで…その情報が、自然と脳へ入り込んだかのように。



今まで思い出したくても思い出せなかった、あの声の主の名を。







私は、脳に入ってきた情報を…完全にインプットさせるかのように、ゆっくりとつぶやいた。








「一ノ谷………滅希(めつき)」





変わった名だな。





そう思った刹那、ふと苦い笑みがこぼれた。





あの日と…同じことを思った。



この名を知った、あの日と。





私の大切な人を…







肉親である母を奪った、








あの日と。



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