鬼姫マラントデイズ

イチノヤ メツキ





「…ごめん、今日は、ちょっと無理」



律希がそんなことを私に言ったのは、あの人の名を思い出した次の日の放課後だった。





「あー…了解!

なに、会議的なやつ?」



周りに聞こえないように小さな声でつぶやく。


…ま、放課後の教室は騒がしいから、


周りに生徒には聞こえないだろうけどさ。



けど、学園の中でもかなりのイケメンである律希は、


赤のメッシュという派手な風貌も含め、目立つ。





うちのクラスでも惚れちゃった子が何人もいるんだ…はぁ。





そしてそんな噂を聞くたびに、なんか胸の中でモヤモヤとしたものが生まれる。



ま、律希本人と話したらすぐ晴れるモヤモヤだけど。




なんだろうね?





「おい、聞こえてるか」



「あ、ごめん。ちょっとトリップしてた」



「…はぁ。


そ、最近会議多いんだよね。

それも全て、俺の父さん…いや、長がさ、


最近兄に代を譲ろうとしてるからなんだけど」






…なるほどね、最近律希が一緒に帰れないのにはこんな裏事情が。



毎回会議、としか聞いていなかったからなぁ。





「そっかぁ…ねえ、今日の会議って家でやるの?

それとも呉服屋?」




「いやー…多分今日は家だけど」




「良かった、私今日呉服屋行こうと思ってたから。

滅希さん、強いじゃない?私の妖力嗅ぎ取ったら…怖いしさ」











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