鬼姫マラントデイズ
「…そろそろね。


さよなら、霧花。

お父さんに…お祖父様に…鬼の皆様に、


ありがとうございました…そう言っておいて」






「おかあ…さま……?」



突然自分から離れていく母親を、霧花はぼーっと見つめていた。





「愛しているわ、あなた。


愛してるわ、霧花。




………さようなら」






そのたった5文字が




人と人とを離す時に使う言葉だと霧花が学んだのは、この時だった。






母親は袖の奥から…何かを取り出した。





「!押さえろ!」




陰陽師たちの焦った声が一斉に飛び交い




皆々が術をかけようと準備した時には、もうすでに…






「………か、はっ……………」





母親の口と


深々と腹に刺さったナイフのせいでできた傷口から




おびただしい量の血が流れていた。





「お、かあ……さま……………?」







霧花の視界が…ぼやけてゆく。
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