鬼姫マラントデイズ
世界は一気に薄暗くなり、判別がつかなくなる。


目からは涙が流れ、口からは言葉にならない声が出ていた。




「ぁっ…ぅ、ぁ………」




なんで。


なんで、なんで、



なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで












なんで





お母様が。









そう思った刹那、彼女の視界はぐらりと揺れ



血なまぐさい臭いが染み込んだ拷問部屋に




涙を流しながら倒れこんだ。



目だけは滅希を捉えており、


キッ!と強く睨んでいた。





「まだこいつは子供だ。



それに、人の血を持つ混血者。





いずれ運命が狂う時が来るのだ、今殺めるのはあまりにも酷である。







鬼の村に、この子だけ………戻せ」






「ですが、結局術は…!」



「聞こえなかったのか!」




滅希の怒りをあらわにした声が部屋に響く。


初めて怒ったところを見た陰陽師は、肩をびくりと揺らした。






「これは…当主である、一ノ谷滅希が命じたことである!


この子を…戻せ!」







…………変な名前だな。




霧花はふと、そう思った。





ねえ、お母様………?







薄れゆく意識の中、霧花と似た笑顔を浮かべる女に、


霧花は















綺麗に…微笑んだ。




















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