鬼姫マラントデイズ


途端、意識が戻る。




はっきり言ってしまうと、あの日の細かいことはちゃんと覚えてなどいなかった。






ただ単に忘れていただけかもしれないし、

脳の中の記憶を司るところが、意図的に隠していたのかもしれない。






初めて見た術だった。


滅希が何やら術を唱えたかと思うと、


自然と意識が離れ…



『第三者』視点で、



目の前で繰り広げられた…『あの日』の出来事。





テレビのドラマのようなその世界は、



私の中の記憶が持つ世界だった。






彼が出した術は…対象の持っている記憶を映像化させ、見せることなのか…





「…思い出したかな」



「ええ。はっきりと。

…頼んでなど、ないですけどね」




「はは…確かに君はあの目をしていた同一人物だが、

随分大人になった」




ついさっきも同じようなことを言っていた気がするけれど。




そう思いながら、私は言葉を紡ぐ。





「…別にあなたを恨んではいません。

妖が陰陽師を殺すことも、

陰陽師が妖を殺すことも、


私たちが住む世界では…当たり前であり、日常なのですから」




滅希は小さくうなずいていた。


彼もきっと、根は優しい人なのだろう。


だからこそ…思うことはいっぱいあるだろうけれど。





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