鬼姫マラントデイズ
「…妖矢、あなたのお兄様は…?」




「霧花、分かってるだろ?

鬼の一族は、『族長』になる家も『副族長』になる家も、

代々絶対的に決まってたんだ。


兄さんは、副族長になるべき者として産まれた…今から族長になることなんて、できやしないさ」






唇をぎゅっと噛む。さっきずっと口を開けて泣いていたせいか乾いていて、ぷちっと切れる音がした。





「…私は、私はもう…鬼じゃない!

私を鬼の村を追放したのはそっちじゃない!


お祖父様が死んだ途端、私をまた呼ぶなんて…そんなん、都合が良すぎる!」





私から鬼の村を奪ったのは、みんなでしょう?



どうせこうなることは、誰にでも予想できたはずなのに…





「霧花、みんなが君を必要としているんだよ」




「…そんな甘言に惑わされるとでも?」



「違う、霧花。

みんな君を心からしたっている…古くからある村のしきたりのせいで、みんな渋々君を追放したんだよ」




「…もう手遅れ。私が人間になりたい、そう思った時点で。

私は鬼のことなんて…知らないから!」





すぐに立ち上がると、そこで初めて気がついた。




私の格好に…





「…なによ、この格好…」




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