鬼姫マラントデイズ
…だって、もう戻れない。




私は2度と、人間になんてなれない。






「…禁断術。霧花はこの名前を聞いたことがある?」





不意に問われたその問いに、私は答えられなかった。

聞いたことはあるけれど…よく分からない。




「妖達が陰陽師に人知れず作り出した、術のこと。


術こそはとてつのなく強いが、


欲望を形にした術が大半。



術を受けた者は…必ずしや不幸が訪れると言われる」







私は黙って聞く他なかった。



重っ苦しい派手な着物は、元々動きづらいけれど。





「…君の母親が受けた、肉体を人間から妖へと変えた術は、



禁断術に分類されるんだよ」






「…お母様は、確かに不幸になった」



私の言葉に妖矢は、ははっと乾いた笑みをこぼす。




「禁断術を受けた者は、大体そんなものさ。

目先の利益や幸せを望み、先のことなど考えちゃあいない。


…周りが不幸になるとも知らずに、ね」






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