鬼姫マラントデイズ
私は矢が飛び交う所に向かって、静かに歩いてゆく。




…もう心の中での決心は、


ブレてなどいない。







「…霧花!こっち来い、そっちは…!」





律希はすぐに、声を出すのをやめた。




きっと…私が律希に、




矢を向けたからだと思う。







「…霧花、何してるの…!」




律希の後ろあたりから、凛が走ってやってくる。


続いて先輩と金鞠も。




…ごめんなさい。






ごめん、なさい。







「き、りか……!」




「……妖矢…」



フラフラと私の元へ走ってきたのは妖矢だった。



妖矢と私に対するように、律希と凛と先輩と金鞠が立っていた。




…皆、ボロボロで。


ところどころにアザはあるし、血は出てるし。




綺麗な顔が…勿体無いよ、皆。






「何してる、お前はもう…自由なんだぞ?

このまま人間界に行っても構わない…俺はお前に、そう伝えたつもりだ…!」




妖矢は私の気が狂ったかと思っているのか。




…狂ってなんかいないよ、妖矢。






「…これが私の選んだ道だもん」





ギリリ…と矢を律希の喉元へ向ける。


律希は信じられない、そう言いたげな表情をしていた。









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