鬼姫マラントデイズ
私はやっと気付いたんだ。




私の幼少期は、決して孤独なんかじゃなかった。




1人寂しい時間が多くても、外を見れば




木が、風が。


鳥が、蝶が。





いつも私に笑いかけてくれていたのに。






そっと、いつの間にか自分の殻に閉じこもっていた。








「……霧花様、そろそろ」





「…分かった、すぐ行く」





そっと立ち上がると、妖矢はニコッと笑う。




その目は…少し悲しげだった。






「大丈夫だって。こっちにずっと帰ってこないわけじゃないんだから」





「…分かってるよ。それぐらい」




分かってるなら、そんな顔しないの。




大人びてるのに…こんな所だけ子供なんだからなぁ。





「…似合ってるよ、霧花。


その服」







「…ありがとう」







妖矢は強い目をして…うなずいた。





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