鬼姫マラントデイズ



「…ありがとう、皆。

もう大丈夫よ、私は」




「ですが、霧花様…」




「元人間界に住んでいた鬼よ?

そんなナメてもらっちゃあ困るわ」





鬼達は返す言葉もないようで、下を向く。



けどすぐに私の方を見ると…バッ!と腰を90度に曲げた。




…勢いがよすぎて、少しびっくりした。うん。






「…ありがとうございました、霧花様!


どうぞ、御幸せに!」







…ほらね。


鬼が残酷な妖なんて、嘘だって。





鬼は、こんなにも優しく、綺麗だもん。
















「いらっしゃいませ」







澄んだ綺麗な女の人の声が、私に向けられる。




それにちょっと笑うと、足を進めた。





「…あら、お客様。その服…」




「?えと…なんでしょう?」





私がそう言うと、店員さんは赤らめて「すいません!」と謝った。




「いえ、恥ずかしながら息子と同じ高校でして…

すいません、急に」





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