鬼姫マラントデイズ
「さてさて、どんなものがあるのかな〜…っと」



小声でそんなことを呟きながら、店内をぐるっと見回す。


広々としていて、どこからか落ち着く琴の音が聞こえる。

音楽を流しているのかな。


全体は木でできているよう。上に天井はなく、屋根の裏がそのまま見える。




……落ち着くな、なんか。



前住んでいた家は、はっきり言って落ち着かなかった。


理由は簡単…周りの空気。



お嬢様として育てられるから、そりゃあ蝶よ花よ状態。

けど私は小さい頃から知っていたらから…



自分が『普通』とは、違うぐらい。


だから影で大人たちはなにを言ってるか気になったし、

いろいろな人に妙な距離を置かれておる気もした。



普段はお嬢様言葉を使わなきゃいけないし、



思う存分に遊べたのは1桁で年齢を表せるまで。




だから…今の私は、寂しいけど…


やっぱり、とても嬉しかったりもするんだ。





ふと目の前にあった、着物に目を奪われた。




「きれー…」



薄い、白に限りなく近い水色の地に、

それより少し濃いめの水色や、薄桃、薄藍の3色が様々な大きさで円を描いていて、

あらゆる場所に散らばっている。


綺麗だし、可愛い!




< 47 / 304 >

この作品をシェア

pagetop