【短】俺の花嫁!
『――煌、頭を上げなさい。』
『、』
この時、重い口を開けたのは祖父。
煌の将来を決めてきた張本人だった。
『君が彼女に入れ込んでいるのは良く分かった。しかし…私は彼女のことをよく知らない。今ここで、君の結婚を認める訳にはいかない。』
『っ、』
どんなことにも厳格な祖父。
そんな祖父が、そう簡単に煌の結婚を認めるわけがないことは、煌が一番分かっていた。
分かっていたが、直接言われると、さすがの煌も悔しさで唇をかむ。
『だが、認めてやらないこともない。』
『…え?』
次の瞬間、祖父から掛けられた言葉に、煌は目を見開く。
目の前の祖父は、口角を少し上げて微笑んでいた。
そんな祖父に、周りにいた両親も祖母も驚く。
『とりあえず、保留だ。こちらで彼女のことを調べさせてもらう。もちろん、彼女の素性じゃなく…煌が惹かれたという、彼女の内面をな。』
『お爺様…!』
祖父は前々から、煌の結婚相手について考えてきた。
(いくつか結婚相手の候補を考えていたが…あれは必要ないようだな。)
ホッと安堵をつく煌を横目に、祖父は微笑んでいたのだった。
そして翌日、茉央は知らずに煌の祖父と両親と出会うことになる。
小鳥遊コーポレーションの会議室1で。
あれが、祖父たちの煌の婚約者の内面を図るテストだとも知らずに―――。