花の下に死す
***


 その後も佐藤義清は、「北面武士」として鳥羽院御所近辺で勤務する日々が続いた。


 武士団は規模が拡大するに連れて、構成員も増大。


 そうなると自然に派閥のようなものが形成されてくる。


 最大派閥は平清盛を中心とした集まり。


 清盛と仲のよい義清も、当然その派閥の構成員と目されるようになった。


 義清自身はそのような小さな世界での諍いには、あまり関心はなかったのだが。


 否応なしに人間関係のゴタゴタに、巻き込まれていくようになる。


 ある日、勤務交代の際だった。


 清盛や義清が勤務を終え、着替えのために詰所に戻ろうとした時のこと。


 入れ替わりでこれから勤務が始まる、別の一団とすれ違った。


 彼らはまさに、対抗勢力に該当する面々だった。


 「あいつらは楽な時間帯ばかり任され、こっちは夜勤やら僧兵どもの相手など、危険な任務ばかり」


 一団の誰かがつぶやいた。


 それに対し別の誰かがこう答えた。


 「仕方ないさ。清盛どののお父上のご威光には、鳥羽院も敵わないのだから」
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