花の下に死す
 (待賢門院さまは、ますます惨めな境遇に……)


 義清は昨年、璋子の屋敷の警護をした時のことを思い出していた。


 鳥羽院の正妃、現在の帝である崇徳帝の母。


 すなわち国母(こくも;天皇の母)として遇される身分。

 
 ……でありながらも璋子の住まいは、物寂しい雰囲気だった。


 数多の女房たちが仕え、華やかな宴などが催されてはいるものの。


 それは見せかけだけの賑わいのように、義清の目には映っていた。


 「おーい、義清。たまには飲みに行かないか」


 同僚に誘われた。


 最近清盛は、妻との間に男子(後の重盛)が誕生したばかり。


 意外と子煩悩だったようで、なかなか仲間との遊びにも顔を出さなくなっていた。


 それゆえこの夜義清は、別の同僚と飲みに出かけた。
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