花の下に死す
 あまりの衝撃に義清は、酒をこぼしてしまった。


 「だ、だって白河院っていえば、かなりのお年だったじゃないか。亡くなられた時は喜寿を迎えられた後……」


 「そりゃそうだ。待賢門院さまは白河院の勧めに従って、孫である鳥羽院に嫁がれたのだから」


 「それにしても白河院が……。孫の妃と通じていただなんて……」


 義清は信じられなかった。


 いや、信じたくなかったと言ったほうが正解か。


 「待賢門院さまは幼くして父親を亡くしたため、その後は白河院の庇護の下、養育されたそうだ」


 「光源氏と紫の上のような関係か」


 「そうかもしれないな。最初は養女をもらって育てているつもりが、成長するにしたがって……というやつか」


 「ならば、鳥羽院に入内する前からの関係なのか?」


 「おそらくは」


 「……」


 義清は驚くのと同時に、少し怖くなった。


 親子どころか祖父ほども年の離れた権力者に、いきなりわがものにされた女。


 そして権力者は、自分が手をつけた女を孫に与えた!
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