花の下に死す
 「みんなどうかしている!」


 拳を握り締め、つい義清はそんなことを口走ってしまった。


 「天皇家の方々は、よく平然と日々を過ごしておられるな」


 「だがな義清、これは天皇家だけの問題じゃないんだ」


 「どういう意味だ」


 「……清盛の噂を、耳にしたことあるか?」


 「清盛? 何のことだ」


 「やはり知らないのだな。清盛には白河院御落胤(ごらくいん)の噂があるのだぞ」


 「ごっ、御落胤? あの清盛が?」


 御落胤、すなわち白河院の隠し子。


 またまた義清は驚かされたのだった。


 同僚から聞くところによると……。


 白河院は若い頃は、正妃と相思相愛だった。


 しかしその正妃が若くして亡くなられると、人が変わったように女遊びがひどくなったという。


 乱脈なる女性関係。


 身分の上下を問わず、いろいろな女に手をつけた。


 そして飽きた女は、褒美と称して部下に与えたものだから、話がややこしくなった。
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