花の下に死す
三、花の幻
***
また春が訪れた。
桜が満開を迎えようという頃。
久しぶりに義清は、待賢門院藤原璋子の屋敷の警護を命じられた。
「間もなく満開を迎えるな」
何年か前、はじめてこの屋敷に遣わされた時も、この桜は満開だった。
あの時と同じように、今年も……。
ふと考えた。
(桜と言うものは、咲き始めた時はとても目に付くのだけど、散り始める瞬間というものに、なかなか気付くことはない……)
なぜか寂しく感じた。
こんなに見事に咲き誇るものが、間もなくすると散ってしまうと知っているから。
「義清、なにそんなところにぼーっと立ってるんだ」
近寄ってきた平清盛に肩を叩かれた。
「一人花見か」
「まあそんなところだ」
「今度俺の家で、花見という名の飲み会をやるから、お前も来いよ」
「たのしみにしているぞ。あ……」
璋子の屋敷では、今年も春の歌会が催される。
相変わらず璋子は御簾の奥で、姿は見えない。
璋子の信頼厚い堀河が、率先して歌を詠む。
また春が訪れた。
桜が満開を迎えようという頃。
久しぶりに義清は、待賢門院藤原璋子の屋敷の警護を命じられた。
「間もなく満開を迎えるな」
何年か前、はじめてこの屋敷に遣わされた時も、この桜は満開だった。
あの時と同じように、今年も……。
ふと考えた。
(桜と言うものは、咲き始めた時はとても目に付くのだけど、散り始める瞬間というものに、なかなか気付くことはない……)
なぜか寂しく感じた。
こんなに見事に咲き誇るものが、間もなくすると散ってしまうと知っているから。
「義清、なにそんなところにぼーっと立ってるんだ」
近寄ってきた平清盛に肩を叩かれた。
「一人花見か」
「まあそんなところだ」
「今度俺の家で、花見という名の飲み会をやるから、お前も来いよ」
「たのしみにしているぞ。あ……」
璋子の屋敷では、今年も春の歌会が催される。
相変わらず璋子は御簾の奥で、姿は見えない。
璋子の信頼厚い堀河が、率先して歌を詠む。