花の下に死す
 「こちらをお向きください」


 自分の身分と地位に誇りを持つ堀河は、決して義清と目を合わせない。


 「堀河さま」


 義清は向きを変え、強引に堀河と見つめ合った。


 「無礼な男。武士はやはり風流などわきまえぬ」


 この期に及んでも堀河は、素直に義清を受け入れようとはしない。


 「あなたを欲しいと思う気持ちに、武家も公家も関係ありません」


 そっと唇を重ねた。


 「……」


 ようやく堀河は、体の力を緩めた。


 「仮面の下の素顔のあなたは、素直なお方だ」


 乱れる衣と髪。


 重なる体。


 夏のはじめの生温い風が、緩やかに御簾を揺らしていた。
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