花の下に死す
 この男が自分を抱いたのは、決して愛しているが故ではないことを、堀河は十分に知っていた。


 自分を経由して、密かに思慕する璋子に近づくためであることも。


 高貴な女性(姫宮、女院)に接近するために、そこに仕える女房を誘惑し、手引きをしてもらう。


 「源氏物語」にも描かれているように、それは男の常套手段だった。


 義清もその手に出た。


 璋子に近づくには、最も信頼を置いている堀河を経由するのが一番。


 以前は全くつてもなかったが、和歌を通じてよしみを得るようになった。


 そして歌会などで面識を持つようになり、和歌を送り合うような間柄に。


 やがて堀河の元へ招かれるようになった。


 何度目かに招かれた際、ついに義清は御簾を開けて堀河を口説いた。
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