花の下に死す
 誘ってくる男の真の目的を察していたこともあり、堀河は最初は火遊びのつもりだった。


 この時代、宮廷内の風紀は非常に乱れていて、堀河はそれを憂う立場だったはずなのに。


 「待賢門院さまに近づくためだけに、あなたを抱いたのだと思っていませんか」


 抱き合った後、夜明け前。


 床に伏したまま問いかける義清に、堀河は何も答えず乱れた髪と衣を調えていた。


 「別の下心などなくても、あなたを抱かずにはいられなかった。あなたは美しい」


 堀河の長い黒髪に触れ、口づけた。


 そして襟元を調えていたその腕を引き寄せて、再び抱きしめた。


 「今朝は……ものをこそ思う必要なんてないのですよ」


 御簾越しの明け方の空は、徐々に白んでいく。


 夜の終わりを気にすることなく、二人は口づけを交わしていた。
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