花の下に死す
 ところが堀河の答えは、意外なものだった。


 「そんなことはないでしょう。璋子さまが孤独を感じられるなんて」


 乱れた髪を直しながら、堀河は答えた。


 「隠さなくてもいい。私とて噂は聞いている。鳥羽院が待賢門院さまを疎まれていることは」


 「院のお渡りが絶えて久しいのは、巷の噂の通り。ですが璋子さまは、そのことをさほどお気になされてはいらっしゃらないのです」


 「どういうことだ」


 「……璋子さまは、あまり物事を気になさるお方ではありませぬゆえ」


 堀河は淡々と答えたが、義清は納得できなかった。


 「気になさらないわけはあるまい。帝の母、国母でありながら院に軽んじられ、挙句院は若い側室にうつつを抜かし、政務も疎かになされ。待賢門院さまのお立場はどうなるのか。お気の毒だ」


 なぜそこまで璋子の肩を持つのか。


 すでに義清自身にも理解不能な領域だった。
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