花の下に死す
 (夢のような空間を漂うようにしか生きることのできない璋子さまが、ほんのわずかでも変わることができるのなら)


 佐藤義清の情熱に触れて、璋子が本当の人生を歩みだすことができるのならば……と願った。


 しかし危険な賭けだった。


 こんなことが露見すれば、まず義清がただでは済まないだろう。


 追放、流罪程度で済めばいいが……。


 そして璋子も、不品行の代償は大きなものとなるだろう。


 自身に課せられる罰よりも、その子崇徳帝が負うこととなるものは莫大な代償。


 政治生命を絶たれるも同然。


 「……」


 だが。


 堀河は決意をした。


 主である璋子が、ぼんやりとした闇から抜け出して、他人を思い遣ることを理解することができるように。


 そして……情をかけた男の切ない想いを、一度でいいから叶えてやりたいと願って。


 「体仁さまの立太子の祝賀行事のため、屋敷の中にあまり人がいない夜があります」


 堀河は義清に一筆したためた。


 「その夜、忍んでお越しください」


 義清を璋子の元へ招き入れる決心をした。
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