花の下に死す
　｢第一、警護など必要あるのかね。すでに院のお渡りも久しく途絶え、訪れる人も稀な待賢門院さまのお住まいなど｣


　｢これ、清盛｣


　平家の嫡男という恵まれた立場にある清盛は、思ったことを口にしてしまうのを義清は熟知していた。


　まだまだ武士など、天皇家や摂関家の人々からは｢犬｣と呼ばれ、蔑まれていた時代。


　武士にとっては不遇の時代ではあったが、その中でも平家は武士階級の代表的存在として、比較的恵まれた家柄であった。


　その嫡男の清盛は、時折周囲を冷や冷やさせる言動もあったが、豪快な人柄で、北面武士仲間にも頼もしく感じる連中は多かった。


　一方佐藤義清は。


　大貴族・藤原氏の血を引く家柄で、比較的裕福な生活を営んでいた。


　恵まれた育ちではあるものの、義清自身は武芸よりも和歌を詠んだりすることを好んでいた。
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