花の下に死す
 「それも仕方のないことなのでしょう。この乱れた世を生き抜くには、あなたは美しすぎる」


 再び璋子の細い体を抱きしめた。


 まるで、月の世界の住人のよう。


 乱れた世を一人生き抜く術もなく、ただ戸惑うばかりの……。


 「璋子さま。私を信じて何もかも委ねてくださいませ」


 「本当に……?」


 こうして通うようになって、いくつもの夜を共にしてきたにもかかわらず。


 抱き寄せる時に璋子は依然として、体をこわばらせ表情には不安が浮かべる。


 「璋子さま」


 繰り返し愛を求めているうちに、いつしか璋子は逃げようとはしなくなった。


 受け入れようという気になったのか、それともあきらめたのかは不明であるが。
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