花の下に死す
 「院も院だな。若き頃に入内され、五人もの皇子を成した待賢門院さまを疎んじて、娘ほど年の離れた側女(そばめ)を」


 「こらこら、清盛。誰かに聞かれたら」


 「だって本当のことじゃないか。しかもその側女・藤原得子(ふじわらのなりこ)は、待賢門院さまを蹴落として、第一の妃の地位を狙っているらしい」


 「まさか」


 「もっぱらの噂だぞ」


 「……」


 待賢門院の本名は、藤原璋子(ふじわらのたまこ)という。


 鳥羽院が中宮すなわち第一の妃である璋子を疎んじているのは、御所に出入りする立場にある義清も当然知っていた。


 原因は……?


 (璋子さまは院よりご年長。盛りの過ぎた女人を遠ざけ、若い娘に心変わりした)


 そう噂する者もいる。


 (璋子さまと鳥羽院は白河法皇により、強引に娶わせれただけ。白河院亡き後、鳥羽院はたちまちのうちに璋子さまを避けるようになった)


 とも。
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